2026.08.06
Visual BankのQlean Dataset、国産基盤モデルの継続性を担保する安全性領域の取り組み、国立情報学研究所とVLM安全性評価データセット「msts-japanese」に画像データを提供
〜 日本語プロンプトへの対応を可能にする、国内初のマルチモーダルAI安全性評価基盤 〜

Visual Bank株式会社(本社:東京都港区、代表取締役CEO:永井真之、以下「Visual Bank」)は、傘下の株式会社アマナイメージズが展開する基盤モデル向けAI学習用データソリューション「Qlean Dataset(キュリンデータセット)」が提供した権利処理済みの実写画像が、国立情報学研究所 大規模言語モデル研究開発センター(以下「NII-LLMC」)が構築したVLM(視覚言語モデル)安全性評価データセット「msts-japanese」に採用されたことをお知らせします。同データセットは2026年7月7日、Hugging Face上で公開されました(※1)。
基盤モデル・VLMを開発する企業・研究機関は、msts-japaneseを通じて、日本語と日本の生活文脈に即したマルチモーダル安全性評価(※2)を、権利処理済みの実写画像を用いて実施できるようになります。同データセットは、LLMの安全性向上を目的とした利用(商用利用を含む)に限定して公開されています(※1)。
NII-LLMCの研究では、同じ画像を提示しても、テキストプロンプトを英語から日本語に変えるだけで、検証した3つのVLMすべてで不適切性が2〜3倍に増加することが示されています(※3)。AIの安全性は言語や文化的文脈に依存して変化するため、日本語での評価基盤の整備は、国内で基盤モデルを開発・提供するすべての企業・機関に共通する課題となっています。
■ 背景:日本固有の条件を取り入れた安全性データセットの不足
ChatGPTの登場以降、主要なAIモデルの多くは画像入力に対応したVLMとなり、社会実装が急速に進んでいます。一方で安全性の評価については、テキスト単体での対応は各社で整備が進んでいるものの、「画像とテキストのどちらも単体では無害だが、組み合わせると有害になる」というマルチモーダル特有のリスクに対する日本語での評価データセットは、これまで存在しませんでした(※3)。マルチモーダル安全性の国際的な評価基盤としては、11言語のプロンプトで構成されたテストスイート「MSTS」(※4)がありますが、日本語は含まれておらず、画像も主に欧米の生活文脈のものでした。前述のとおり、言語を日本語に変えるだけでモデルの有害回答率は大きく変化します。そのため、日本でAIを安全に使うためには、日本語のプロンプトと、日本の生活文脈に即した画像による評価が必要です。
さらに、評価用の画像には特有の要件があります。1点目は、安全性評価は「現実の状況」に対するモデルの応答を測るものであるため、AI生成画像ではなく実写であること。そして2点目は、危険物や人物など有害性の評価に用いるデリケートな被写体を含むため、被写体・撮影者の権利処理が完了していることです。この2つを同時に満たし、評価データとして採用・公開に耐える日本の実写画像を、オープンなWeb上で確保することは容易ではありません。
■ 発表内容:msts-japaneseの概要と提供範囲
名称 | msts-japanese |
|---|---|
公開者 | LLM勉強会(llm-jp・NII-LLMC 大規模言語モデル研究開発センターが中核となる研究コミュニティ) |
公開日 | 2026年7月7日(Hugging Face) |
内容 | MSTS(※4)400件のうち330件への日本語翻訳と日本語参考回答の付与。うち82件には、日本の生活文脈に対応した「日本ローカル画像」と専用のプロンプト・参考回答を追加 |
利用条件 | 利用登録制。LLMの安全性向上を目的とした利用に限定(商用利用可)。再配布不可。 |
URL |
アマナイメージズは、この「日本ローカル画像」として、実写画像を提供しました。いずれも撮影者の権利処理を完了した実写画像であり、AI生成画像は含まれていません。
■ Qlean Datasetの役割:学習から評価まで、基盤モデル開発に必要なデータを供給する
MSTSの画像がパブリックドメイン等のWeb上の公開画像から構成される(※4)のに対し、今回の日本語拡張には、アマナイメージズが権利者から正規に預かり管理してきた、権利処理済みの実写画像が使われています。データごとに取得ソースと権利処理が明確であるため、研究機関は権利確認の負担を負うことなく、安全性というデリケートな文脈でも安心して評価データとして採用・公開できます。
安全性評価用のデータにも、基盤モデルの学習用データと同じ要件(権利がクリアであること、現実を写した実データであることI)が求められます。アマナイメージズは、学習用データの提供にとどまらず、評価・安全性対策までを含む基盤モデル開発の各工程に対するデータパートナーとして、国内外の開発企業・研究機関を支援してまいります。
■ 国立情報学研究所 大規模言語モデル研究開発センター 鈴木 久美 氏からのコメント
「AIの安全性は、言語や文化の文脈によって大きく変わります。我々の研究でも、同じ画像への質問を英語から日本語に変えるだけで、モデルの不適切な回答が増えることが確認されており、日本語と日本の生活文脈に即した評価データの整備は急務でした。一方で、安全性評価に用いる画像には、現実の状況を写した実写であることと、権利処理が明確であることが欠かせません。今回、アマナイメージズ様に権利処理済みの実写画像をご提供いただいたことで、安心して公開できる評価データセットを構築することができました。今後も日本語圏のAIの安全性向上に向けて、評価データの拡充を進めていきます。」
■ 今後の展望
NII-LLMCが構築を進めるマルチモーダル安全性評価データへの協力を継続するとともに、安全性評価・レッドチーミング(※5)用途を含む評価用データの提供を拡充してまいります。また、画像の認識・理解に関する国内最大級の学術会議「MIRU2026」(2026年8月3日〜6日・長崎)に出展し、本事例を紹介しております。
『Qlean Dataset(キュリンデータセット)』について
『Qlean Dataset』は、Visual Bank傘下の株式会社アマナイメージズが提供する、基盤モデル開発向けAI学習用データソリューションです。
アマナイメージズは40年以上にわたり、ラジオ局・出版社などの権利者からデータを正規に預かり、世に流通させてきました。「守るから、預けていただける」という、データの権利を守ることを事業の中心に置き続けてきた、その体制そのものが Qlean Dataset の土台になっています。
Webには存在しない一次データを権利処理し、学習に使える状態で届けてきた実績が、国内外の基盤モデル開発者への大規模納品として結実しています。
音声・画像・動画・3D・テキストなど多様なモダリティに対応し、国内外のデータホルダー・メディアとの協業によるデータラインナップを随時拡充しています。カスタム収録・収集にも対応しています。
Qlean Datasetサイト:https://qleandataset.visual-bank.co.jp/
AIデータセット「AI データレシピ」:https://qleandataset.visual-bank.co.jp/lineup
お問い合わせ:https://qleandataset.visual-bank.co.jp/contact
Visual Bank株式会社
AI開発力を最大化する次世代型データインフラを構築・提供するスタートアップ企業として、「あらゆるデータの可能性を解き放つ」をミッションに掲げ事業活動を展開。漫画家の「もっと描きたい!」をサポートするAI補助ツールを提供する『THE PEN』、AI学習用データセット開発サービス『Qlean Dataset(キュリンデータセット)』を提供する株式会社アマナイメージズを100%子会社に持つ。
また、Visual Bankは国の研究開発プログラム「GENIAC」にも採択され、社会実装に向けた取り組みを加速させています。
代表取締役CEO:永井 真之
所在地:〒107-0062 東京都港区南青山7-1-7 C-Cube南青山ビル6F
Visual Bank企業URL:https://visual-bank.co.jp/
アマナイメージズ企業URL:https://amanaimages.com/about/
※1 「msts-japanese」(llm-jp・2026年7月7日公開):https://huggingface.co/datasets/llm-jp/msts-japanese 。利用条件はAnswerCarefully Dataset利用規約に基づきます(LLMの安全性向上目的に限定・商用利用可・再配布不可)。
※2 種類の異なる複数のデータを同時に扱う生成AIモデルにおける安全性の評価
※3 鈴木久美・高橋哲朗・Su Myat Noe「AnswerCarefullyデータセットの拡張:地域的にデリケートな問題およびマルチモーダル質問の追加」言語処理学会第32回年次大会発表論文集(2026年3月)。有害回答率はViolation Rate(5段階の安全性評価でスコア1〜2の回答の割合)。同論文の予備調査(3つのVLM・画像40件・プロンプト2種)に基づく数値です。
※4 MSTS: A Multimodal Safety Test Suite for Vision-Language Models(Röttger et al., 2025, arXiv:2501.10057)。英語および10言語への翻訳プロンプトと画像200件で構成。画像はパブリックドメインまたはCC-BY/CC0ライセンスのWeb上の公開画像(同論文の記載による)。
※5 攻撃者視点で意図的に攻撃を仕掛け、システムの脆弱性を体系的に評価する手法





